第76回土浦全国花火競技大会
幾分曇りがちのときもあったが、風が気持ちよく、総じて晴れ渡る秋のよき日。楽しみの土浦の花火の日がやってきた。
当日の待ち時間、午後3時過ぎだっただろうか、花火会場ライブのラジオ放送が会場一帯にPAで流された。ああ、聞き覚えのある声だなあと思っていると野村陽一さんのインタビューであった。謙虚で実直な人柄が滲み出してくる語りだ。インタビューアーが優勝への期待を込めて自信の度合いをしきりに質問するものの、野村氏は「最高の花火を披露することのみに集中するのが花火師であり、あとは運です。紙一重で競っているので受賞しようと思っても獲れないものですよ。」との旨でサラリと受け流すのだ。潔い言葉にうなるばかりだ。
すばらしい花火の連続であった。
当日の感想メモを踏まえて振り返ると、個人的な印象では、スターマインの部は、紅屋青木煙火店さんと伊那火工堀内煙火さん。10号玉の部は、圧倒的に野村花火さんと紅屋青木煙火店さん。創造花火の部は北日本花火さん・・・がとくにすばらしいと思った。
花火ファンとしては、優勝がどこになるかということにはさして興味は抱かない。よい花火は、よいのだから。
しかしながら、やっぱり結果は気になるものだ。あくる日審査結果が発表された(下記)。なるほど個人審査というのも面白いことかもしれない。むしろ一致しないほうが楽しいとも思う。
【参考】 第76回審査結果 抜粋
内閣総理大臣賞
山梨 (株)マルゴー
スターマインの部 優勝
経済産業大臣賞 山梨 (株)マルゴー
10号玉の部 優勝
中小企業庁長官賞 茨城 野村花火工業(株)
創造花火の部 優勝
茨城県知事賞 秋田 (株)北日本花火興業
「華美七変化」より (株)紅屋青木煙火店
DATA : Pentax645N + 75mm Velvia50
<前日の状況>

本年は前日から場所取りに参戦したので、その状況を若干お伝えしたい。
これまで桟敷席周辺を除き事前の場所取りはフリーだったが、本年より桟敷席周辺を除く河川敷の一部については、前日の正午から開放することに変わった(9月より主催者のウェブサイトで前日の無料席確保のルールが記載されていた)。
私は11時半ころ現地に到着し、12時からの無料観覧席取りに並んだ。見立てでは400名くらい並んでいたようだ。12時スタートだったが、並んだ位置から動くことなく順繰りにシート敷きに開放されるというルールだ。私は最後尾だったので12時25分ごろリリースされた。どなたも走り回ることがなく、実にほのぼのとした情景であった。堤防道路際を含めて余裕でどこでも確保できるキャパであった。
新聞などのマスコミ報道で、現地の席取りが加熱ぎみだという話題で持ちきりだったので多少不安を抱いていたが、結果オーライという状況だ。実際には、あくる朝出直すつもりなので、仮押さえということで堤防道路際に小さく場所を確保した。

午後は打ち上げ現場周辺の見学を行った。しかけ花火の足場付近には彼岸花が鮮やかに咲き誇っている。本年はいい色だ。
そこに散策する花火愛好家の方がいらっしゃったので、いろいろと教えていただいた。昭和40年代から全国の花火を行脚されておられる方で、豊富な花火話をうかがうことができた。
このとき、打ち上げ本部では「筒祭り」がはじまった。大会の成功と無事が祈願された後、スターマイン打上げ場所の一角より雷と号砲が上がった。風が強い。
先輩のお話によると、「本来であれば尺玉の数に合わせて筒を立てるべきところ、土浦では競技尺玉用の筒を5本しか立てない」とういうことだ。いろいろ事情があるらしいが、日本最高峰の大会としては意外な事実だと思う。実際に現場を見てみた。周辺土地の建設工事の都合なのか、昨年より下手側(桟敷から見て左方向)に移動している。足場があまりよくない。大会本番中、順番間違いをせずに、確実に安全に次々と入れ替えをしなければならないので、花火師さんにとっては厳しい戦場になろう。
<当日の開催まで>
さて、以上のように仮押さえをしておいて次の朝、桟敷席裏に並んで場所取りをした。堤防道路際で、花火に向かって左側(下手側)で拝見することとした。こちらの出足はカメラマンの方々をはじめ、さすがに早かった。12時に開放されることととなるが、こちらものんびりした状況であった。暖かな天候のもと、日頃の疲れがどっとでて、炎天下でほとんど寝ていた。

開催が近づくにつれ、混雑度がアップしてくる。1時間前ともなると、会場は異様な高揚感につつまれてくる。
さあ時間だ。魅惑の花火の大饗宴が始まった。
各写真をクリックしてください。
<10号玉の部、創造花火の部より>
五重芯の一発目、小松煙火さんの作品がうまく開いた。小関煙火さん・佐藤煙火さんの三重芯がまん丸に決まった。
土浦花火づくしの興奮冷めやらぬ内に、後半の10号玉があがる。カメラ操作を忘れてしまい山ア煙火さんの大きな盆の全容を捉えることができなかった。信州煙火さんもくっきりと大きい。
そして菊屋小幡花火さんの五重芯がみごとに決まった。なんとすばらしい尺玉の競演か。

小松煙火さん |

小関煙火・佐藤煙火さん |

山ア煙火・信州煙火さん |

菊屋小幡花火さん |
小口煙火さんの伸びやかな姫菊にはいつも驚かされる。紅屋青木煙火さんの四重芯には思わず「優勝だっ」と叫んだ。篠原煙火さんの四重芯には言葉が出ないほど魅入った後、千葉の野口煙火さん・一福煙火さんのカンペキな変化菊にまた驚く。

小口煙火さん |

紅屋青木煙火さん |

篠原煙火さん |

野口煙火・一福煙火さん |
続くイケブンさん・筑北火工さんを楽しみ、とどめの野村花火さんには「優勝だあ」と二度目の雄たけびを上げた。10号玉の部は昨年、不運にも崩れた玉が目立ったが、今年は凄かった。 創造花火は、おとなしい作品が多かったような印象だった。北日本さんの「かざぐるま」は出色であった。

イケブン・筑北火工さん |
 野村花火さん |
 篠原煙火・太陽堂田村煙火さん |

北日本花火さん |
<スターマインの部より>
スターマインの嚆矢、須永花火さんの作品は「うる星やつら」の歌に乗った、明るくダイナミックな展開に会場が沸き上がる。 関口煙火さんの四季の表現はメリハリがあって素敵だ。山内煙火さんは白を基調としつつ微妙な色の変化、空間のダイナミズムを表現する異色作。新潟煙火さんは花火会場をなんと教会にしてしまった。個性的作品がつづく。

須永花火さん
|

関口煙火さん |
 山内煙火さん |

新潟煙火さん |
伊那火工堀内煙火さんの作品は、音楽との融合がきわめて緻密に組み上げられたもので、和の情緒がたっぷりと楽しめる芳醇な作品だ。あたかもスローモーションによる映像と響きが、観る者の記憶に刻み込まれてゆくような技だった。なつかしさを覚え、個人的にはもっとも感動した。 ファイアートさんは元気さがイカす。斎木煙火さんは千輪のおもしろさが際立った。
 伊那火工堀内煙火さん |

伊那火工堀内煙火さん |
 ファイアート神奈川さん |

斎木煙火さん |
野村花火さんの毎回異なる表現に驚くが、今回は静的な展開が渋かった。 丸玉屋小勝煙火さん・田熊火工さんは安定感がすばらしい。
 野村花火さん |

野村花火さん |
 丸玉屋小勝煙火さん |

田熊火工さん |
糸井火工さんはパワーアップした煌めきが印象的。 本年優勝されたマルゴーさんは圧倒的な千輪づくしで時も忘れる。会場の興奮も最高潮。 続く和火屋さんも千輪でとどめ。会場にはどよめきがつづく。
 糸井火工さん |

マルゴーさん |
 マルゴーさん |

和火屋さん |
とりに近づき、芳賀火工さんの緩急あるパワフル・スターマインが楽しい(ハンパなスカ音楽には、どうも共感できませんが・・・スミマセン)。
ラスト3作品の一つ目、菊屋小幡花火さんのクライマックスのブルーが印象的であった。
 芳賀火工さん |

芳賀火工さん |
 菊屋小幡花火さん |

菊屋小幡花火さん |
紅屋青木煙火さんの変化星を多用した「華美七変化」は凄い作品だった。クライマックスで藤の色が浮き出たとき、ゾクゾクするほどのインパクトを感じた。これぞ時の芸術だ。同行者との意見交換でもスターマインの優勝は紅屋青木さんの作品ではないかと思われた。 ラストの山ア煙火さんの作品も実にすばらしい出来上がりで満足させていただいた。堂々とした風格が頼もしい。
 紅屋青木煙火さん |

紅屋青木煙火さん |
 山ア煙火さん |

山ア煙火さん |
競技会のラストでは、見る者はもう満腹状態になっているので、おそらく審査する側も集中力が途切れているでしょうから、不利なのではないかと思われる。とはいえ、菊屋小幡花火さん・紅屋青木煙火さん・山ア煙火さんともに凄かった。
<「土浦花火づくし」より>
昨年にましてパワーアップが著しい大会提供スターマイン。感動的であった。 堤防道路際というカブリツキの環境では、なかなか撮影がうまくいきません。
 「土浦花火づくし」 |

「土浦花火づくし」 |
 「土浦花火づくし」 |

「土浦花火づくし」 |
例年に増してたいへん充実した花火大会でした。尺玉では五重芯がおなじみになってきましたし、四重芯の充実も凄い。そして完成度の高い三重芯・八重芯を心から楽しみました。スターマインは千輪の競技という面があったかもしれません。昨年も思いましたが、お客さんの喜ぶシーンを花火師さんはよく見ているのでしょう。それを次の作品に生かしているような姿勢が感じられました。マンネリが許されない世界なのでしょう。
これだから、日本の花火から目が離せません。
<大会中の観覧状況 ・・・行にも似た撮影への心構え・・・>
撮影にあたっては、カメラ3台を持参した。10号玉用645、スターマイン用645、創造花火+サブ用35mmのいずれもフィルムカメラ。それぞれ、役割を割り振って、大会進行にそった撮影台本をあらかじめ作成して臨んだ。が、やっぱり3台はなかなかうまく扱えない。みつかいどう同様、いい花火を見ると撮影を忘れてしまうので反省しきり。気力・体力の限界を勘案しますと2台がいいところかなあ?
ま、ともあれ大会の興奮が幾分かフィルムに収められたのではないかと思う。
今回、尺玉とスターマインのど真ん中の堤防道路際に陣取ったわけだが、真後ろが通路であるので花火が始まると例年のとおり、どんどんと自分のシートの中に人が滲みだしてくる状態であった。今回斜め後ろにいた人は、大会開始時に来て、私とお隣様のシート間に三脚の脚をねじこみ事実上は完全に他人のシート上で撮影しようとするのだ。徐々に侵略してくるアキレた御仁だ。戦後のどさくさで土地を収奪したやり方はこれでしょう。フィルム交換作業中にやんわり、ときに厳しく対応しながらの撮影にはタフな精神力が求められた。ああ、アホラシ。例年以上に尋常でない過密空間があった。観覧仲間がいたのでまだ楽だったが、当方の三脚にアタックされたりしかねないので、ひとりだったら辛かっただろうなあと思った次第。
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